ボタンをひとつ失ったと仮定してみればその意味を理解できよう。

細部であるが故に、時に全体より重要となり、全体を破壊することも、又異なった意味をあたえることもできる。服飾という人間の文化と欲望の歴史のなかで、その鏡/レンズ/眼となりうる。ボタンをはずすことで秘密があらわになることもあるが、掛け違うことで困難が出現することもある。
技術とモードの接点


20世紀においては、ボタンは手工芸品から工場生産品へと変化してきた。その変化は、素材や加工の技術革新の側面から、またモードやファッションとの関係からみた文化史的側面からという、両面からのアプローチが可能である。小さなオブジェであるが故に、時代の流行を鋭敏に反映し、新しい素材もボタンには実験的に用いられやすい。
ボタンへのアプローチ方法

歴史、素材、用途、モティーフ、サイズなどから可能である。
1)歴史
過去(手工芸品)/現在(工場生産品)/未来(ノスタルジックな遺物?)
2)素材
◎天然素材:ホーン、ボーン、皮革、ウッド、竹、ラフィア、ストロー、ナッツ(コロゾ)、コルク、シェル(蝶貝mother-of-pearl、高瀬貝trocas、さざえturban、あわびabalone、夜光貝green shell)、べっ甲、真珠、珊瑚、貴石・半貴石、など
◎人造素材:ガラス、セラミック、エナメル、布/飾り紐(ビーズやスパンコールや各種刺繍のテクニックとともに)、メタル(ゴールド、シルバー、コッパー、ピューター、ブラス、ステイール、アルミニウム)ゴムや紙など
◎半合成素材:セルロイド、ガラリス(ミルクカゼイン)など
◎合成素材:ベークライト(フェノール系)/ルーサイト(アクリル系)/ナイロン/ポリエステル/アセチ樹脂/ユリア樹脂/エポキシ樹脂/ABS樹脂 など
3)用途
男性用/女性用の区分(大きな差はない)。制服ボタン(ミリタリー、消防、鉄道、郵便、学校、王家、貴族のおしきせ、スポーツ用やクラブ用)。メモリアルボタン(フランス革命、オリンピックなど)/コインボタン。純然たる装飾用から下着用まで多様な種類があり、過去には手袋や靴用の需要も大きかった。
4)モチーフから
文学的主題としては歴史、神話、宗教、童話、映画演劇音楽の演目までを含み、政治的キャンペーンに関係した物からマンガ、スポーツ、サーカス、ギャンブルまで。自然(太陽月星座、動植物昆虫まで)や人工物(建築物、交通機関など)、風景描写。エキゾシズムーエジプト、オリエント、シノワズリ、ジャポニスム など。リアリスティックとよばれるボタンは果物野菜、たばこ、ステイショナリー、食器、ボルトナットなど工具まで、日用雑貨のそのキャラクターブランドを含めすべてを対象とする。幾何学的デザイン模様(アールデコ期に多い)/ペーズリー模様/布目模様(セラミックに木綿のパターンを転写したチャイナキャリコボタンなどが有名)。実物(花や貝などのオブジェ)を封じ込めるボタンもある。
5)サイズや構造のちがいからの分類法 大は毛皮用から小はドール用まで
構造としては、二つ穴四つ穴五つ穴など縫い付け穴による区分も可能であるし、あし(シャンクshank)のつくりのちがいでの分類も可能。ボタンの止め方、knot(こぶ)をつくるもの(例えば中国/朝鮮ボタンーー玉と緒))による分類。カフスボタンやピローケースボタン(両側から引っ掛ける形式)。既存のボタンの上にかぶせる、カヴァーボタンと言う物もある。
※欧米においては、日本のねつけもボタンの中で論じられる事が多いが、構造的には異なると思われる。小さくて意匠をこらした工芸品としての側面では類似している。